インバウンド集客に課題を持つ様々なエリア・施設の方々からはほぼ「受入環境整備」「情報発信ツール」「集客施策」などのアドバイスを求められます。ですが、日本らしいインバウンド集客の最後の切り札はそこにはないと思っています。「日本はおもてなしの国」ということとは一味違う、「人」の存在に注目しています。今回は香川県の素敵な人を紹介します。
笑顔があふれる思いがけない接点 in屋島
「外国人と話すことが楽しくて楽しくて」と和田さん 香川県高松市の観光地「屋島」、源平の古戦場跡地として最近は訪日観光客がとても増えています。屋島へは琴平電鉄の「琴電屋島」駅か、JR「屋島」駅のいずれかで降りてバスに乗車するのですが、前者は無人駅、後者は案内役として1名（ここでは和田さん）が常駐しています。無人・有人の差もさることながら、訪日外国人の満足度に大きな差を生んでいるのはマニュアルなど存在しない和田さんのフレンドリーなコミュニケーションにあります。改札を出た訪日観光客から、あるいは和田さんから声をかけて（当然スマホの翻訳機能が頼りです…）、道案内に始まり、高松や日本の印象・良いところなどを派生的に大笑いしながら話し、帰りの駅構内でも延長戦が始まります。屋島観光が100点、和田さんとの会話が100点で合計200点の思い出にに増幅されること間違いなしなのです。
外国人とのコミュニケーションのコツを訪ねる私に和田さんは、「楽しいから話しかけているだけだよ。だって世界中の見ず知らずの人たちと話すことができるんだから。生きがいだよ、生きがい！」
「もっと話したい」という相思相愛 in北浜アリー
「ひとり一人の良い思い出になれば」と川崎さん 十数年前、高松港の一角の使われなくなった倉庫街にカフェや雑貨店がオープンしました。この「北浜アリー」というエリアを、“日本の魅力を日本人以上に発掘することが上手な”台湾人ツーリストのみなさんが見つけて育ててくれました。そして今も良い関係性でおしゃれなエリアは成熟しつつあります。「206TSUMAU（キッシュ専門店）」の川崎さんがこう話してくれました。「最初はとにかく笑顔でシンプルな言葉で話すようにしていましたが、言葉が不十分な時でも台湾や韓国の方など優しいので向こうから寄りそうように理解してくれるんです。だから逆に満足して帰ってほしくて英語を習い始めました。皆さんがここで心地よい時間を過ごすためにできることは何でもやりたいんです。」と。
「北浜アリー」のショップで働く人たちはみんな外国人対応に前向きです。雑貨店に勤める後藤さんも柔らかい表情で「言葉が通じるかどうかは二の次だと感じています。相手の言っていることを一所懸命に理解しようとする気持ちが大事、そして相手の満足する答えも身振り手振りで100％通じますよ。」と控えめに、でも誇らしげに答えてくれました。
随所に光る栗林公園の配慮、そして決め手は人
外国人もノーストレス「栗林公園」 数年来、日本を代表する庭園と聞かれて迷わず「栗林公園」と答えるようになりました。栗林公園の外国人への配慮は特に素晴らしいのです。入場門手前の大きな看板・地図の多言語表示はもちろんのこと、掲出する内容が頻繁に変わる「園内で見ごろの花」の紹介看板は花が画像でわかりかつ花の名前もしっかり英訳されて添えられています。入場後もビジュアルと多言語による細かい配慮は続きます。歩くコースごとの所要時間や車いす向けのコース誘導、歩き始めて道が分かれるポイントにはすべて英語の案内、一定間隔で現れるトイレのサイン、見どころの名称やそこまでの距離などもすべて英語表記があります。
そして極めつけは園内ガイドの方のクオリティです。私は英語のガイドスタッフを伴う外国人観光客を尾行しました。園内の解説は当然なのでしょうが、疲れていないかのどが渇いていないかなどのケアの言葉に時折ジョーク挟みながら、常に笑顔でやさしく寄り添っていました。ゲストのペースを守りながら、「熱心な解説」と「少し離れて見守る」の緩急をうまく使っていました。1周回って別れる時のゲストが心から感謝する姿に、私は涙が出そうになると同時に日本人として誇らしくもなりました。
香川県のインバウンド対応、ここで紹介しきれなかった「人が主役」のスポットがたくさんあります。「仏生山」の和菓子屋のおかみさん、「うみまち商店街」の食堂のおじさん、「女木島」で道案内をしてくれたおばあちゃん…。
そして「人が主役」のスポットは全国に無限にあります。この「きわめて日本らしい日本人のハート」がある限り、いやこれがあるからこそ日本のインバウンドは不滅なのだと思います。今日も明日も、そんな「出しゃばらず地道に日本の価値を爆上げしてくれている人たち」に会いに全国を放浪したいと思います。また他のエリアも紹介しますね。では、また！