四国最大の都市・松山を訪れたところ、韓国、台湾などアジアからの訪日観光客で街が活気にあふれていました。道後温泉や松山の中心街・大街道にあるホテルや物販店、飲食店では、売り上げも伸びているという声も聞かれました。2年前に訪れた際は、大街道の大きな商店街は人通りが少なく、閑散としていました。しかし、今回は多くの訪日観光客が訪れ、人通りが戻っている様子が見られました。特に夜の商店街周辺は飲食店が多く、歩いている人の多くが訪日観光客という状況でした。人気のしまなみ海道でサイクリングを楽しむ人も、欧米やアジアからの訪日観光客が目立ちました。なぜ今松山が訪日観光客で賑わっているのでしょうか。現地で見聞きした情報をもとに、その背景と街の状況をレポートします。
松山が訪日観光客で賑わう理由
▲朝6時から営業し、訪日観光客にも人気の道後温泉 ①松山空港発着の国際便がある
松山と韓国を結ぶ航空便は、現在1日3便運航されていると聞きました。韓国人観光客からの人気も高く、来年には4便に増える予定だそうです。航空便の充実は、海外から松山を訪れる観光客にとって、大きな利便性に繋がります。
※松山空港ビルの公式HPによると、韓国便はソウル線が1日2便、釜山線が1日1便運航されています。台湾便は台北線が水曜、木曜、日曜に1便運航されています(掲載時点の情報)。
②コンパクトな街で、様々な観光を楽しめる
松山は、観光、買い物、飲食、温泉、ゴルフなどを一緒に楽しみやすい街です。市内の主要な場所には、徒歩や路面電車で移動できます。さらに人気のしまなみ海道や高松、高知など四国内の他の都市にもアクセスしやすいことが松山の魅力の一つと考えられます。
③東京・京都・大阪以外の地域を訪れる訪日観光リピーター。
日本を何度も訪れる観光客の中には、東京、京都、大阪などの主要観光地とは異なる場所を訪れたいと考える人もいます。松山は主要空港からのアクセスが良く、大都市ほど観光客が集中していない場所で、温泉やサイクリング、四国巡礼などさまざまな体験を楽しめます。こうした点から、次に訪れたい日本の都市として松山を選ぶ人もいるようです。
今回訪れたホテルやお店で聞いた声。
▲大街道の商店街にある老舗パン店。 ■大街道にあるホテル
外国人宿泊客の割合は60%以上で、韓国、台湾、中国、欧米の順に多いそうです。韓国人宿泊客が最も多い理由として、松山空港発着の航空便が1日3便あることを挙げていました。ゴルフだけでなく観光を目的に訪れる人も多く、2泊3日または3泊4日で滞在する人が多いそうです。国や地域によって旅行のスタイルにも違いがあるようです。ホテルの話では、韓国人観光客は飲食店については事前に調べていても、その他の観光や、買い物の予定は現地で決める人が多い一方、台湾人観光客は、観光、飲食、買い物先などこと細かく調べ、スケジュールを立ててから訪れる人が多いとの事でした。旅行の計画の立て方にも、それぞれの特徴が表れている様です。因みに、このホテルでは、フロントスタッフ3人の内2人が外国人でした。
■大街道にある人気セレクトショップ
来店客は韓国人と中国人が多く、外国人客の割合は現在10-20%ほどだそうです。今後の訪日観光客の増加にも、大きな期待を寄せていました。韓国人観光客は、店の前を通りかかって立ち寄るというよりも、最初から買い物を目的に来店する人が多いそうです。客単価も日本人客より高く、売り上げに大きく貢献しているとの事でした。他の地域で聞くことのある「韓国人観光客は客単価が余り高くない」という話とは異なり、松山では違った傾向が見られました。
■大街道にある老舗パン店
購入者は韓国人と中国人が多く、外国人客の割合は普段は10-20%ほどですが、多い日には50%までに増えるそうです。多くの外国人客がSNSで店を知り、来店しているとの事でした。外国人客が多いことから、メニュー表には韓国語、中国語、英語が表記されています。地方の店舗においても、外国人観光客に対応するため多言語表記は重要ですね!
■道後温泉商店街にあるお土産雑貨店
来店客は台湾人と韓国人が多く、外国人客の割合は約20%位とのことでした。食品も扱う雑貨店ですが、外国人観光客に人気があるのは小物雑貨だそうです。人気商品は、地元のお土産品よりも知名度の高い「モンチッチ人形」で、最も人気がある商品でした。2番目に人気があるのは、縁起物として販売されているゴールド色の「金のうんこ根付」でした。日本ならではのユニークなデザインや縁起物が、外国人観光客の興味を引いている様です。
■道後温泉商店街にある松山銘菓店
松山の有名なお菓子といえば、真っ先に名前が挙がる「タルト」。老舗菓子店が競合する中、ある店舗では、来店客の20-30%がアジアからの訪日観光客だそうです。国や地域によって、商品の買い方にも違いがあるとのことでした。台湾人観光客は団体で来店し、商品を沢山購入して短時間で店を出る人が多いそうです。一方、韓国人観光客はカップルやファミリーでの来店が多く、商品に英語、韓国語の説明があることも活用しながら、じっくり商品を選び、少量を購入する人が多いとのことでした。因みに、最も人気のあるタルトは「抹茶タルト」でした。現在、日本のお土産として抹茶味の商品が人気を集めていますが、松山の銘菓店でも抹茶味の人気が見られました。
■タクシードライバー
今回、さまざまな方に訪日観光客の状況を聞きましたが、タクシードライバーからは、他の方々とは異なる意見が聞かれました。台湾人観光客は団体客が多く、ツアーバスを利用することが多いそうです。韓国人や中国人観光客は、空港から松山駅・松山市駅などの移動に路線バスを利用する人が多く、タクシーの利用は市内の近距離移動が中心だそうです。夜の繁華街で多く見かける外国人観光客も、徒歩でホテルへ移動する人が多いため、タクシーの長距離利用は少なく、売り上げにも大きな影響がないとのことでした。 訪日観光客の増加が、全ての業種の売り上げ増加につながる訳ではないことが分かりました。
まとめ
▲訪日観光客に人気の、愛媛県のイメージキャラクター「みきゃん」の人形、 今回の松山訪問では、韓国や台湾など、アジアからの訪日観光客が街を歩き、買い物や飲食を楽しむ姿が多く見られました。ホテルや小売店では、訪日観光客の利用が売り上げに貢献しているという声が聞かれ、外国人客に対応するための多言語表記などの取り組みも進んでいました。
一方、タクシー業界のように、訪日観光客の増加が必ずしも利用増加につながっていない業種もあります。航空便の充実、コンパクトな街の利便性、温泉やサイクリングなどの観光資源。これらが、松山を訪れる訪日観光客の増加を支える要素の一つになっているようです。
現在、中国からの訪日外客数が減少する一方、韓国や台湾、欧米など、他の国・地域からの訪日外客数は増加しています※。今後、松山がどのように訪日観光客を受け入れ、地域の観光や商業の発展につなげていくのか、引き続き注目したいと思います。
※日本政府観光局(JNTO)の訪日外客数統計(2026年1月~8月)を集計すると、前年同期比で、韓国が+21.2%、台湾が+19.8%、欧米市場では米国が+6.1%、英国が+5.8%、フランスが+8.6%となっています。訪日観光客の訪問先や国・地域の多様性が進んでいることがうかがえます。
USPジャパン 大阪駐在 中村 哲也