その他

台湾情勢をめぐる発言は街にどう影響したのか?~大阪・京都・東京で見えたインバウンドの実態

   

昨年11月の国会における高市首相の台湾情勢をめぐる発言に伴い、中国人の訪日ゲストにどの様に影響が出ているのか、昨年12月実際に街へ出て街の様子や店舗で話を聞き、実態を体感しましたので報告します。
中国路線の発着便数が多く、最も影響を受けていると言われるのが関西国際空港です(※中国方面便、17%減-12月25日関西エアポート発表)。その影響から、大阪・京都が特に打撃を受けていると言われていますが、先ずは大阪の状況からお伝えします。

     

■大阪:影響は大きいが、多国籍化が進む街

 
▲お正月の心斎橋筋商店街
   

大阪で最も多くの中国人観光客が訪れる心斎橋筋商店街では、商店街自体には多国籍の訪日ゲストが訪れており、全体としては大きく人が減っているという印象はありません。ただ、中国人観光客に限って見ると、やはり減少していると肌感覚でも感じます。商店街沿いに数多く並ぶスポーツシューズブランド店の一つのスタッフに話を聞いたところ、「昨年同月比で中国人客が約80%減少し、暇でしょうがない」とのことで、影響の大きさがうかがえました。これらの店舗では、インバウンド売り上げが店舗全体の70-80%を占めるケースも多く、減少の影響は深刻です。
一方、日本一長く庶民的な商店街として、訪日ゲストにも人気の大阪・天神橋筋商店ではやや異なる状況が見られました。老舗の刃物店の店主に話を聞くと、「元々中国の方は少なく、売り上げへの影響はほとんどない」「リピーター客が多く、その方々からは『最近は訪日ゲストが多すぎる、静かな日本が好きだ』」という声も増えている」との事でした。この様に、店舗の業種やブランド力によって状況は大きく異なり、中国人に人気の商品・業態ほど影響が大きい傾向がある様です。
こうした状況の中でも、大阪・梅田の百貨店の売場担当者からは、「春節に向けてイベントや情報発信を強化したい」と、中国人観光客の来訪を期待し準備する声も聞かれました。また、大阪では大阪・関西万博の影響もあり、「これまで来店のなかった中東・東欧・南米の方が増えた」という声を多く聞くようになっています。中国人減少の影響はあるものの、その一方で訪日客の国籍の多様化が進み、大阪の街はより一層国際化を進めている様に感じられました。
※大阪観光局の発表では、2025年11月の中国人旅客数は前年同月比3%増となっています。

     

■京都:もともと欧米中心、影響は限定的

 
▲京都・錦市場
   

京都・錦市場は各国からの訪日ゲストで、狭い通路に人が溢れています。ただ、ここでも肌感覚として中国人観光客は少ない様に感じました。また、多くの店舗が並ぶ新京極エリアにある、現在訪日ゲストにも人気の印房店の店主に話を聞くと「多いのはヨーロッパの方で、中国の方は少し減ったかな、という程度の印象です」とのことでした。京都の街を歩いて感じるのは、京都観光が歴史的、文化的体験を主軸としているため、元々欧米からの観光客が多く、中国人観光客の比率は比較的に低い傾向にある、という点です。そのため、中国人観光客の減少による影響は、大阪ほど大きく感じられませんでした。

     

■東京・銀座:国籍分散で影響を吸収

 
▲東京・銀座 ラグジュアリーブランドのクリスマスショーウインドー
   

銀座では、大阪以上に幅広い国からの訪日ゲストが訪れていることを実感しました。銀座にあるセレクトショップ御三家の一つの店舗でスタッフに話を聞くと、「中国の方が少し減ったという印象はあるものの、最近はより多様な国のお客様が来店しており、他国からの来店がそれを補っているため、売り上げへの影響は余りありません。銀座のお店の多くは同じ状況だと思います」とのコメントでした。実際に一昨年この店舗を訪れた際よりも、現在は日本人客より訪日ゲストが多いのではないかと感じるほどでした。

 

     

■特定国依存を超えた日本観光の可能性
 訪日ゲストに占める中国人比率が22.4%(※JNTO:1-11月までの集計)と依然として高く、インバウンド消費は中国人観光客への依存度が高い状況にあります。しかし、コロナ禍で訪日ゲストが途絶え、多くの店舗が大きな痛手を受けた経験を踏まえると、今後は以下の対応が重要と思います。
①特定の国に依存しないインバウンド施策
②大阪・関西万博を契機に、日本にまだ訪れたことがない国々の人々へ、日本の魅力を積極的に発信し来日を促すこと
③日本の「隠れた魅力」を、先ずは日本人自身が再認識し、国内外へ伝えていここと
実際、10月にイタリア・サルディーニャ島に旅行した際、タクシードライバーから「先日家族で日本に行ったが観光、買物、食事全てがとても楽しかった」と声をかけられ、写真も見せられました。「また行きたいですか?」と尋ねると「もちろん、また行きたいよ!」と即答でした。言い方は少し乱暴ですが、サルディーニヤ島のタクシードライバーでさえ日本の魅力を体感し、強い興味を持っているのです。日本にはまだまだ世界に伝えきれていない魅力が数多くあると、改めて感じさせられました。
中村 哲也

 

関連ブログ記事

TOP