地域振興事業

スペシャルインタビュー:和歌山県串本町様(第2回)

株式会社USPジャパンでは2年前より民間初のロケット発射場設営に伴い、和歌山県串本町より業務委託を受けて町民向けワークショップ等各種事業を展開しています。全国でも数少ないロケット発射場を軸とした新たな地域振興に取り組まれている田嶋町長のスペシャルインタビュー第2回です。
第1回:町が抱える課題 そしてロケットの町へ
第3回:世界の串本町へ

USPジャパンとの協業について

新津:ロケット発射場建設の話があって、地権者の方、漁業の方など直接利害関係者の方々の非常に深いご理解を得る努力を串本町さんが行ってきてインフラは整ってきたわけですが、間もなくロケット発射に向けた地域振興をはじめるという段で、私どもUSPジャパンはお手伝いをさせていただきました。
先ずは子供達に向けた教育ワークショップ、続いて住民の方にこのロケット事業を活用して頂くための、シンボルになる様なロゴマーク、イラスト、CG画像の制作をはじめ、住民の方々が一致団結して取り組めるきっかけになるものとして宇宙ウィークなどのイベントをさせて頂いてきました。
この一連の私達がお手伝いをさせていただいている中で、町長として一番印象に残っていらっしゃる取り組みなどはお有りでしょうか?

田嶋町長:全て印象に残っていますし、お手伝いを頂いている全てのことはこのロケット事業を成功させるには必要な項目であると思っています。特筆して大事なのはワークショップですね。子供達も含め本当にロケットと言われたら、イメージはわかるけれども具体的なことをわかっている人はそんなにいなかった。その中で子供達から大人まで、本当にわかり易い「まるわかりブック」を作成していただき、年齢層・業種が分かれる中で、多くのワークショップをして貰い、本当にわかり易い説明をしていただきました。
町の職員からもUSPジャパンの新津さん等の講演を聞いてよくわかったという声を聞きました。先ず町の職員自体が理解していないと町民の皆さんから問われますから、町民の皆さんが行政に対して問い合わせて来た時に、町の職員は皆知っていると思うので、『その課ではないのでわかりません』という返答は町民の方々に本当にロケット事業に力を入れているのかという誤解を生み出しかねません。そういった意味では若い職員から全部講演を聞かせていただく中で、一定の基礎的な知識を身に付けたのは本当に町としては大きなことと思っています。やはり町民の皆さんにロケット事業を進めていく中で、今、町が進めているロケット事業はこういうことを目指している、またロケットの大きさってこんなだよ、衛星の役割はこういうことだよ、という基礎的なことを町民の皆さんに知って貰うということは本当に大切なことです。
そういう意味でロゴマークは大変重要でその象徴となるものは当然必要ですし、今後その数も増やしていくのもいいでしょうし、町民の方々がそのマークをサークルで使ってもらう、商売で使ってもらうということが大切と思います。また宇宙ウィークの様にJAXAとかいろいろな所に協力をしていただく中で、現実にそれがレプリカとあったとしても、こういうものなのかと、この地域に住んでいなかったら、よっぽど興味のある人しか見に行っていないと思うので、実際そういったモノがこの田舎に来て実際に目にすることが出来るというのは、もの凄く印象深く町民の皆さんに衝撃を与えたのではないか思っています。そういった意味でUSPジャパンの皆さんには多大なご協力というか、本当にロケット事業をサポート頂いているなと、心から思っています。

地域の子供たちがカギ

新津:ありがとうございます。最初に町長にワークショップのご説明をさせていただいた時に、小学生・中学生には全員聞かせたいと承って、正直、これは大変なことになっちゃたなとも思いましたし、果たして本当に全員出来るのかな?と不安にも思いました。子供達に全員聞かせたいというのは、町長はその時、どういう思いで言われたのでしょうか?

田嶋町長:このロケット事業は僕等の時代よりも、今の串本の小学生・中学生の子らが成長した時代に全盛を迎えるのではないかと思いました。僕等は今、本当にロケット事業の基礎を作り上げている段階で、本当に直面してくるのは、ある意味恩恵を受けるのは、この子供達ではないだろうかなという気がしています。そういった子供達にちゃんとしたテキストが有って、ちゃんとした知識を頭の中に入れていただき、そこで興味を持って貰う。小さい時に興味を持つのか、持たないのかでは全然違う、方向が違ってくると思うので、これから1号機打ち上げ、更に2号機、3号機と打ち上げが続く中、この子供達がどういった意識で向かうのかなど、ロケット事業に対する意識が全然違ってくると思います。
今度、串本古座高校に宇宙探求コースというのが出来ます。ちょうどさっき仁坂知事から連絡貰ったところですが、今日(4月27日)発表する「令和4年度わが町元気プロジェクト」の第1弾に串本町の「宇宙(そら)と海と大地につながる町・南紀串本プロジェクト」が決定しました。そしてもう一つは、和歌山県、和歌山県教育委員会、スペースワン株式会社と和歌山県立串本古座高校における宇宙教育活動の推進を目的とすることで協定を締結することになりました。協定を締結することで授業等への講師派遣、教職員への研修支援、授業に必要な機器や設備等の助言、スペースポート紀伊への見学機会の提供などが行われます。

未来への先行投資

田嶋町長:まさに串本古座高校にはスペースワンやJAXAなどからいろいろご協力を願うことになると思いますが、本当にロケット事業の最先端のプロがここ串本に来て、そして実際に肉眼で、近くでロケットを見ていく、その子供達が基礎的な知識を持ってみるのと、基礎的な知識がなくて学ぶのでは全く、違ってくると思います。
その子供達が興味を持って、将来ロケット関係に進まなくても、ロケット事業の裾野ってものすごく広いらしいので、そこをベースにして勉強に頑張って貰う。そして一番望ましいのは串本にロケット関連の工場が出来て、一旦は大学や就職などで串本を離れると思いますが、その後帰ってきて串本で働く、そうなってくると、冒頭で申し上げた高齢化率、また地元に働く場所が無いといった課題も大きく改善されてくると思っているわけです。

新津:そうすると町長が子供達にと仰っていただいたのは、ロケット発射場が軸となって、その子供達が大人になる20年後、30年後の全く違う串本の未来への先行投資ということですね。

田嶋町長:今回、1号機の打ち上げに関しては大島、直線距離で8㎞ぐらいあるらしいですが、発射場より打ちあがっていくロケットの軌道というか放物線を小学生・中学生・高校生と全部で1,000人ぐらいと思いますが、この子供達全員をその軌道が見える大島の所に連れて行って、特別席で見せてあげる。これは、子供達にとって、後々、何号機も打ちあがっていくでしょうけど、1号機の発射を俺らは見たんや、というのは、これは一生の子供達の酒飲んだ時のネタや自慢話にもなるでしょうし、それがあって、俺、今ロケットの設計の仕事しているみたいなね。

新津:凄いですね。夢が広がりますね!

田嶋町長:昔は宇宙飛行士と言えば、訓練をしまくった、めちゃくちゃ頭の良い人がなるというイメージがありましたが、今はちょっとニュアンスが変わってきているような感じがします。小さな時から興味を持って、宇宙飛行士を目指す子供が、この本州最南端、和歌山県の一番端っこの串本で生まれてくる可能性がある、そういう子を是非とも育てたいなと思っています。

串本町からみたUSPジャパンの「ユニークさ」とは

新津:ロケットというのは非常に貴重性の高いユニークな地域の大切な資源になるというお話でしたが、私どもUSPジャパンもこのユニークというのを一つキャッチフレーズとしてお手伝いさせていただいています。これまでお手伝いした中で、こんな取り組みはビックリした、ユニークだなと思われた様なサポートの内容って有りますでしょうか?

田嶋町長:ユニークですか?すべてはユニークっていえばユニークでしょうけれども、さっき申しあげたワークショップにしても、もし町のスタッフだけでやっていたら資料作りから発想はあそこまでの内容にはならなかったと思います。今、南紀熊野ジオパークセンターが串本に完成して語り部(ジオガイド)たちが努力して頑張って貰っていますが、そういう人たちがこの宇宙のことをガイドするような、そういったことも今、USPジャパンさんのサポートで発展をしてきていますよね。そういう今の段階までにUSPジャパンさんの力添え、協力がなかったらこの状態にまでもっていけてなかったと思いますね。いずれは何処かで気が付いたかも知れませんが、随分時間のロスが出来ていんじゃないかと思っています。

新津:私達はワークショップであっても、制作するもの作りであっても、出来るだけ地元の方に先生になって貰いたい、あるいは活動の中心になっていただきたいという思いを心掛けて活動してきました。そんな中で観光協会さんだとか、あるいは移住してこられた方だとかが、私達のこれまでのお仕事の中心を担っていただいてきたと思っています。どうしても東京から手伝いに来ていますので、よそ者での警戒心もお有りだったんじゃないかなとも思っています。そのあたりは何かお感じになられましたでしょうか?

田嶋町長:それは有るでしょうね。見ず知らずの会社さんでも有ったし、我々が取り組もうとしているロケット事業をよく理解していない時期でしたので、USPジャパンさんにアドバイスを貰いながら国の補助事業も共に受注しながら、というのは、最初はある意味冒険でもあったのかなと思います。以前にも新津さんに話したと思いますが、人間には波長というのがあってね。僕等もこの仕事20年やっている中でなんか波長合うな、合わないなというのは正直あるんですよね。それはその個人ではなく、その個人が社長であったら、それはその会社全部を象徴している部分が見えてくることもあるので、そこらは途中からは何の違和感もなかったですね。東京、串本の距離っていうのは本当に縮まりましね。

新津:本当にありがとうございます。初めてお会いしてから4か月の間に距離が縮まりました。

田嶋町長:本当に串本の地に根付いて貰って今では、なくてはならない存在になっていますよ。

その3に続く

【実施時期】2022年5月29日

TOP