みなさんは、『洗肺』という言葉をご存知ですか?・・・肺を洗う。そう、『洗肺』とは中国語で「きれいな空気を吸って、肺を浄化させること」を意味します。コロナ回復後はこの『洗肺』を目的に、多くの中国人ゲストの訪日が予想されています。
去年の11月末、私は岡山県と香川県の『洗肺』をテーマにしたFAMトリップに同行いたしました。参加者は日本在住の中国人女性二名で、年末にはこのお二人を講師に上海で現地の日本好きのKOCと旅行会社の方々を対象にした『瀬戸内洗肺セミナー』が開催されました。
セミナー受講後のアンケートでは、印象に残った両県の洗肺スポットをご回答いただいたのですが、選出理由のなかに今まであまり目にしなかった言葉を複数みつけたのです。
「ここは日本らしくない景色ですね。行ってみたいです」
日本らしくない景色…?日本らしくない景色だから、行ってみたい…?
日本らしい景色はすぐに頭に浮かびますが、日本らしくない景色とは、いったいどんな景色でしょうか。そのことを念頭に、中国人が選ぶ岡山県・香川県の洗肺スポットのベスト3をご紹介します。
1位 香川県・父母ケ浜
父母ヶ浜(ちちぶがはま)は、香川県三豊市にある海岸で、日の入り前のマジックアワーの夕日としても知られています。近年は水面が鏡面状に見えるウユニ塩湖のような写真を撮影できるとしてSNSを中心に人気が出ており、新たな観光地として注目されています。
「開放的な空間で芸術的な写真が撮れる」「フォトジェニックな景色が非常に良い」など、「洗肺」にあわせて自身の写欲を起こす “芸術的”な 場所と評価されました。
2位 四国まんなか千年ものがたり(JR四国)
「四国まんなか千年ものがたり」は香川県の多度津駅から徳島県の大歩危駅を1日1往復運行する観光列車。車窓の景色を眺めながら、地場のお料理を楽しめます。
「車窓からの景色が素晴らしく、お料理もおいしそう」「地元の人々が列車に手を振ってくれるのがいいですね。」など、町から人里、谷、山中へと変化する景色、そして地元住民の歓迎の意を感じられる、中国にはない日本独自の観光列車への関心が高かったです。
3位 岡山県・蒜山の森と牧場/
岡山県の最北端に位置する蒜山高原。中国地方有数の高原リゾート地として多くの人から人気を集めています。広大な牧場があり、日本一のジャージー牛の産地としても有名です。
「圧倒的な自然の旅!日本らしくない風景」「森でアウトドア体験をしたい」「とにかく空がきれい。印象的な風景」と、空と緑の広大な大自然を味わい、アウトドア体験を楽しむ、まさに『洗肺な旅』が支持されました。
また同率3位の香川県・小豆島オリーブ公園は瀬戸内海を見下ろす小高い丘にあり、約2,000本のオリーブの木があります。また、園内の風景は「魔女の宅急便」の世界感に通じ、国内外を問わず女子旅に人気です。
「とてもとても癒される場所!」「魔女の宅急便の世界に浸って写真を撮りたい」など、物語の主人公になって撮影できるのがやはり人気のポイントです。
1位から3位までの人気の洗肺スポットをご覧いただきましたが、「日本らしくない景色」のイメージはつきましたでしょうか。
緑の高原、広く澄み切った青空、人情や暮らしが垣間見られる車窓からの風景、そして、陽の光が創り出すロマンティックな海の景色…
開放感があり、大きく深呼吸をしたくなる場所。癒される場所。ハッと心が動かされる景色。その景色には国境がなく(日本だからいいとか、中国の景色に似ているからいいとか)、シンプルに心が洗われる風景、そしてこの瞬間を心に、写真に留めておきたいと思う景色ではないでしょうか。
『洗肺』の旅では日本らしさを感じるスポットも訪問しましたが、「日本らしい景色」よりも「日本らしくない景色」にこそ需要があることがわかりました。
日本好きや旅行会社の方々のアンケート回答でしたので、特に訪日リピーターにこの傾向が強いと言えそうです。
日本らしくない景色。。。なんだか、不思議な気がしますが、これらは地方にこそあるものだと思います。あなたの町に有名な神社仏閣やおいしいお寿司やラーメン屋さんがなくてもかまいません。ただ、癒され、心を動かされる場所。思わず写真を撮りたくなる太陽や自然がつくる美しい景色があれば、観光コンテンツとなり得るのです。自然がつくる景色は一日のうちの一瞬でも、季節限定でもかまいません。
その価値や独自性を高め、わかりやすく中国市場に訴求していければ、あなたの町がコロナ後の “観光の新天地”となり得るかもしれません。
USPジャパン 紙谷知子